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退院の日の朝、朝食を持って病室に入って来た看護師。
「きじまさんの所から届いた物よ。迎えに来る前に着替えると良いわ」
看護師は紙袋を私に渡してきた。
それを受け取り、紙袋の中を覗くと黒色の布が見えた。
だからと言って、中の物を取り出す訳もなく、ベッドの脇に紙袋を置く。
「これからは、きじまさんと一緒に居られる緒方さんが羨ましいわ」
看護師は、そう言い残し病室を出て行く。
羨ましいって……何が……?
言葉の意味を深く考えようとは思わない。
看護師が羨ましいと言うなら私の代わりに行けば良い。
私は好きで迎えを待っている訳じゃないのだから。
そんな事を思いながら朝食を食べた後、着替えをする為に、紙袋の中に入っている黒色の布を取り出した。
黒色のワンピース……?
何故、黒色……?
疑問に思った時、一瞬、脳裏に浮かんだのは、全身黒を身に纏う烏の姿。
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