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こんな場面が前にもあったはず……？
記憶はないけど、身体はキチンと覚えている。
１階まで下りてから、非常階段の踊り場から顔を覗かせ、辺りを見渡す。
すぐ近くに救急外来と書かれたプレートがあり、その先に外に出られるドアがあるのが見えた。
救急外来の出入口へと足を進め、そこから病院の外に出る。
何気に向けた視線の先、我が物顔で停まっているのが車が見えた。
ドイツ語で神の恵み、慈悲を意味するメルセデス・ベンツ。
気づかれない様に、黒のベンツが停まっている場所とは反対側へと駆け出す。
行き先……？
そんなのは分からない。
足が向く方へと、ひたすら走るだけ。
前にも、こうやって走っていた。
逃げる為に。
そう思いながら、疑問符が頭の中に浮かんだ。
なんの為に走ってた……？
何から逃げていた……？
……駄目だ……思い出せない……
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