命を待つ町で

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「淀川向こうは焼け死んだ人で  山が出来てる」 「日本でこうなんやから  外地の兵隊さんは  もうみんな死んでるわ」 道行く人が噂話・・・。 「見てもないことをゴチャゴチャ  好き勝手に言うてからに!  デマかせや、デマかせ!」 おかあちゃんは息巻くけど・・・。 私は・・・ 眠ってる将太の額に手をあてた。 将吉さんと同じとこにある 大きなホクロが悲しくて 悲しくて・・・悲しくて・・・。 片付けものをするおかあちゃん、 (女丈夫・・・さすがやなあ) 感心するけど・・・私は もう絶望しか感じない。 (みんな、ミドリもアカネも  外地へいった将吉さんも  みんな死んだんや!) 指ひとつも動かせずにいた。 「さっさと立って今夜の寝る用意や。  ミドリやアカネが帰ってきたら   さっさと腹ごしらえして  寝らんとアカン!」 「おかあちゃん・・・無理や・・  もう無理なんやって・・・  みんな、みんな死んだんや!」 「無理みたいなもんはない!」 焼け跡の道へ ストーンと声が抜けていく・・・。
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