命を待つ町で

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「ああ、こんなときでも  おかあちゃんの声は轟くなあ」 聞き覚えのある声に振り向くと 真っ黒な顔のミドリとアカネ。 「ミ、ミドリぃ!アカネ!」 「晶子ねえちゃん!」 さっきまでの暗転幕が もの凄い勢いで開くのが 自分でも可笑しいくらい。 「やったあ!やったあ!」 私達三人は抱き合った。 「ハグレたけど人混みに  紛れて走りまくった。  オリンピックに出れるで、  なあ、ミドリねえちゃん」 「命カラガラや、ハハハ」 「よかったあ!よかったあ!」 一息ついて三人で、 「おかあちゃん!」 土間辺りに眼をやると、 腰が抜けたように地面へ へたりこんでるおかあちゃん。 「だいじょうぶか!?」 駆け寄り、見た顔は涙でびしょびしょ。 「生き・・・生きてェ・・・  生きててくれたあ・・ああ  生きててくれたあああああ」 毅然とか吹っ飛んでるおかあちゃん、 子供みたいにしゃくりあげてた・・・。 (女丈夫・・・そんなモン・・・  そんなもんない・・・  おかあちゃん・・・、  必死で自分を奮わせてたんや) ミドリとアカネ、おかあちゃん、 いつまでも泣いてる三人と  胸に抱いた将太の顔を見た。 ニターと笑う将太の中には 大好きな将吉さんがいる。  
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