鬼の便り

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 トントントンと、部屋の扉を叩く音が耳に入り込んでくる。  母が私を起こしてくれたのだ。   今日は、四月一日。 世間ではエイプリルフールと盛り上がっているだろうが、私にとっては重要な日でもある。  新学期がもう少しで開始されることで不安や、楽しみに包まれる時期であるが、注目しているのはそこではない!  軽く背筋をのばし、重いまぶたを擦り無理やり眠気を覚ますと、パジャマのままで外の郵便ポストに向かう。 「あ! あったぁ!」  古びた和紙の封筒に、達筆な文字で私の名前と住所が記載されている。  約束を守ってくれた。 あまりの嬉しさに近所の家にも聞こえるほどの大きさで叫んでしまい、慌てて口を塞ぎながら足早に家の中へと戻っていく。 「ちょっと! サトミ⁉ 何騒いでいたの⁉」  小言が得意技の母にロックオンされる前に、ドタドタと階段を駆けていく。  チラッと視界の端に、父の姿があったが、いつも通り冴えない表情のまま、欠伸をしていた。  バタン!  大きな音をたてながら部屋の扉を閉め、一つ粗めの鼻息を漏らしながら手紙を見つめる。    机の上にある、埃をかぶった文房具入れの中からハサミを取り出し、丁寧に封筒の端を切ると、中身を取り出しつつベッドに座った。  中身の紙も、丈夫な和紙でどこか緑と土の香りがする不思議な手紙。  ペラっとめくってみると、そこにはこう書かれていた。
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