世界政府第二代大統領

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 遠くはない未来。平和を望む人類は、マイク=キャロビンが世界政府樹立運動を起こした。  長い歳月を費やした困難を伴う、世界的な政治運動が押しとどまることはなかった。結果、多くの人々の念願だった世界政府が樹立された。  世界政府成立から十年が過ぎた……。  それからの日々、世界政府の仕事は、ほぼなかった。政治運動をしていた頃を、懐かしむ世界政府職員も多い。  初代世界政府大統領、マイク=キャロビンは、倒れて救急車で緊急入院をした。   世界政府(せかいせいふ)大統領府のプレスセンターにも、当然、絶えず報道関係者が詰めており、大統領を乗せた救急車をテレビカメラが複数撮影していた。  世界中のテレビやインターネットニュースで“マイク=キャロビン世界政府大統領、救急搬送される”と、速報が流れる。  政界政府の報道官は、緊急記者会見で、風邪で数日の療養が必要と、医師が診断したと言い切った。  記者からの質問には、報道官が答えをはぐらかしていた。病名が風邪なのは、ウソっぽいのは、見破られる。  多くのマスコミは、大病でないかと、大騒ぎしていた。  日本国(にほんこく)でも、キャロビン大統領が入院したニュースは、大きな扱いだ。  テレビでは、報道番組のコメンテーターが真顔で話す。 「海外の報道では、キャロビン大統領重病説もあります」 「あ、お話の途中ですが、キャロビン大統領が入院している、病院で動きがあったようです。中継です。病院前の橋本さんお願いします」  話を遮ったのは、司会のアナウンサーだ。突如、テレビ画面は、病院前からの中継に切り替わった。 〈ワー! キャー! 鳴戸(なると)さーん!〉  スーツ姿の記者、橋本は、病棟の外側から壁の前に立ち、騒ぐ野次馬の若者を無視して、マイクを手に大声を発した。 「キャロビン大統領が入院しているスイスの病院前です。先ほど、世界政府の鳴戸(なると)副大統領を始め、閣僚数人が病院に入りました」  橋本ははしゃぐ十人以上の若者に、カメラの前に迫り出されるようになりながら、驚き顔をしている。テレビ画面は、報道番組のスタジオに切り替わった。  テレビ画面には、ペットボトルのドリンクで喉を潤す、アナウンサーが映っていた。アナウンサーは、慌てて居住まいを正す。        
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