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第一話:隠されていたのは、甘い甘い愛の囁き
「ねぇ、知ってる?」
彼女は何の前触れもなくそう言った。輝くような綺麗な瞳の奥は感情なんてものはなかった。
「婚約者を振り向かせるのって大変なのよ」
生まれたその時から彼女の運命は決まっていた。
まるで定めかのようにすべてのことが決まっていたのだ。彼女の意思はすべて無視して行われており、彼女はまるで礼儀の良いお人形のよう。
「わたしの婚約者、ちょっと難儀なお人なのよね。
クールっていうか、猫っぽいっていうか...。」
“猫”は彼女を象徴したようなものだ。
輪郭の整った綺麗なお顔に大きなネコ目と形の良いお鼻と口。そして自分の気持ちをすべて隠す話し方。彼女は絶対に自分の心を表には出さない。すべてを隠してすべて偽りで、すべてにおいて嘘を吐く。
彼女にとって、学校の教員もクラスメートも友達も偽りの存在でしかなかった。彼女が信じる者はただひとり、己のみだった。
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