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落ち着こう。 自分の部屋に閉じこもってじっとしていた。 僕は伊純が好き。 伊純は僕が嫌い。 なんだ、簡単なことじゃないか。 僕は心の中でひっそり想っているだけで満足できる人間だった。 失恋しても、そのまま想っていればいい。 この頃から青い蝶が僕のまわりを飛び始めた。 何匹も僕の体に巻き付くように飛んでいる。 どこに行ってもついてくる。 「邪魔だな、どっか行けよ!」 母と食事している時も蝶がぐるぐる顔のまわりを飛ぶ。 「何だよこれ…!うっとおしいな。どっか行け!」 あまりにしつこいのでつい大声を出してしまった。 「お母さん、窓開けてない?こいつら外から入って来たんだよ」 「…何を言ってるの?」 「だから、こいつらだよ。僕のまわり飛んでるじゃん」 何匹も青い蝶がまとわりつく。 腕で何度払ってもまた来る。 僕を嘲笑するようにふざけた飛び方でぐるぐるぐる。 「どっか行けよお前ら!!!」 僕は殺虫剤を探した。
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