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高校生になった時、彼と出会った。
山中伊純は派手で素敵な存在だった。「いずみ」って女の子みたいな名前だな、それが第一印象だったけど、僕の名前も詩音と書いて「しおん」と読む。
僕は教室の隅で本を読む内向的な性格で、伊純は明るくていつも話題の中心にいた。
憧れで、遠い存在。
髪は少し茶色くて、制服のブレザーを着崩してピアスもつけていた。学校で禁止されていることをやぶって平然としている。
生真面目で無口な僕には眩しすぎて心を奪われた。
この間配られた進路希望の紙を眺めていたら、突然誰かが声をかけてきた。
「詩音くんはもう将来を決めたの?」
見上げると前の机に座って僕を覗き込んでいる伊純がいて驚く。
「決めてないけど…、何で?」
これが初めて彼と会話した一言だった。
「俺も決めてない。マジメな詩音なら将来何になるのか興味あってさ。見せてよ」
断る前に白紙の用紙は取られていた。
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