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悪魔は揃って微笑んだ。
「やっぱり、此処にあったわ!」
美紀子は慣れた様子で、ずかずかと周助の部屋に上がり込んだ。いくら中学時代の元カノだったからといって、いくらなんでも不躾すぎやしないだろうかと僕は思う。もうあれから二十年も過ぎているのだ。いくら彼がまだ独身で親と同居していたからといって、彼には彼の今の生活やプライベートがあっただろうに。
彼女はそんな僕の苦い気持ちもなんのその、机の引き出しの三段目からノートのようなものを取り出した。ご丁寧に、表紙には“diary”の文字がある。こんなカンタンに秘密の日記って見つかっていいもんかなあ、と僕は少々呆れてしまった。ご丁寧に、せっかくの鍵付きの日記なのに、鍵も外れて垂れ下がったままなのだから全く意味がない。
「何か残ってるんじゃないかなって思うのよ、此処に。見てみましょうよ。おばさんが帰って海外旅行行ってる今が、家探しする大チャンスでしょ?」
「家探しって、本当に家中探し回る気かよ美紀子。此処、周助一人で住んでるわけじゃないんだぞ。いくらなんでもまずいじゃないか」
「合鍵持たされてる元カノに何言ってるのよ。持たせたまま忘れてるあいつがいけないの!」
「ええ……」
事情が事情なのはわかっている。それでも、人の日記を勝手に見るのは気が引けた。僕が赤い日記帳の表紙を見ながらまごついていると、後ろで黙って様子を見ていた英理奈と壮一が声をかけてくる。
「迷う意味ある?周助の元カノは美紀子だけど、一番の親友だったのはあんたでしょう」
「そうそう。雅人だって知りたがってるんじゃないのか。なんで周助が……健太を殺したのか、さ」
「……」
そう。僕達が今此処にいる理由。
わざわざ元カノの美紀子に合鍵を借りてまで、こっそり周助の家と部屋に忍び込んでいる理由。
全ては周助が起こしたとされる、殺人事件の真相を知るためだった。つい一週間前のことなのである。中学時代の仲良しグループである僕ら六人のうちの一人、健太が惨殺死体として発見されたのは。
傍には、周助が大事にしていたキーホルダーらしきものが落ちていた。ゆえに、どうやら元仲間のみんなは、揃いも揃って周助が健太殺しの犯人だと決め付けているらしい。そして、何故周助が健太を殺したのか、その真相を調査したいと僕を誘ってきたのだ。
「確かに、僕だって……誰が健太を殺したのかは知りたいよ。友達だったんだからさ。でも、周助が殺したと決め付けるのは早計じゃないか?ここまで調べて、無実だったらどうするんだよ」
中学時代は、六人でいっつも遊び歩いていた。
引っ込み思案な僕。
みんなのアイドルだった美紀子。
その美紀子の彼氏で、イケメンのサッカー部員だった周助。
手先が起用で、勉強がとてもよくできた健太。
そして派手好きの英理奈と、その彼氏の壮一。
この様子だと、英理奈と壮一の関係は今でも続いているのかもしれない。美紀子と周助は、卒業式の時に大喧嘩をしてそのまま別れてしまったことで語り草となってしまっていたが。
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