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あれからどれくらいの日が経ったか。ほぼ毎日通っていてくれた涼汰は、それまでの日々が嘘だったかのように訪ねて来ることがなくなった。
僕のせいなのだろう。
あの日、僕が涼汰の望む言葉を返せなかったから。
どうにもならない後悔で息が詰まり、溜息をつきたくなった。
どんな言葉なら許してもらえるのか、ぼんやりと考えるも浮かばない。そもそも、涼汰が来てくれないと何も伝えられないのだけれど。
もしかしたら、そういう所に愛想尽かされたのかもしれない。
気を紛らわそうと本を手に取り、ペラペラと捲る。
でも文字は一切頭に入ってこず。代わりに、わざわざ買ってきてくれた本を僕へ手渡す時の涼汰の顔だとか、楽しげにあらすじを語る声色ばかりが脳裏をよぎる。
「なんでこうなるのかな……」
嫌気しか刺さない自分の人生を妬ましく思い、本に顔を埋めていると。ドアをノックする音が響いた。
ばっと顔を上げて扉に飛びつく。
「りょ「おい、起きてるか?」
声をかけるより先に扉の向こうに立つ人物が喋った。
その声から涼汰ではないことがわかり、落胆し一気に体が重くなる。
コンコンっと再び鳴る。
無視しよう、そうしよう。そう思い踵を返したところで、再び声が響いた。
「お前の友達の親から電話だ。お前と話がしたいって」
ピタッと足が止まる。
友達……そう呼べる人は一人しかいない。間違いなく涼汰のことだ。
でも、涼汰の親が?なんで涼汰本人じゃなくて親が?
「出ないのか?」
そうノック音と共に響く気だるげな声に、扉へ縋りよって震えた声を吐くことしか出来なかった。
「行く……出る」
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