迫りくるテンション

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迫りくるテンション

 うーーー。  ネタが出ないよぅ。  なによ「最高のお祭り」って。  いきなりそんな事言われたって、私にそんな引き出しないわよ!  書けない。  書けない、書けない、書けない。  書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない、書けない。 「そんなこと言っても仕方がないでしょ?書かなきゃ始まらないんだから」  誰よあんた。 「私はあなた、あなたは私。あなたの中にいる、もうひとりのあなたよ」  はぁ!?なにそれ!  今忙しいんですけど。  ネタが出ないと書けないんだから!  ……ちょっとまって。  今あんた、もうひとりの私だって言ったわよね? 「ええ、言ったわ」  じゃあ、あんたと私は一心同体ってことよね? 「そうね」  じゃああんた、ネタをかn「ないわよ」  食い気味に入ってくるんじゃないわよ!入力おかしくなったじゃない! 「あなたがネタを出せないのに、私が出せるわけないじゃない」  ですよねー……わかってたけどね。 「まあ、三人寄れば文殊の知恵ともいいますから」  うわ、またなんか来た。誰よあんた。 「私もあなたの中にいるもうひとりのあなたですわ」  またなの?もうひとりが多すぎじゃない? 「多すぎって言うほどじゃないでしょ、まだ二人目なんだから」 「そうですわ。三人目が出てきたらいっぱいと言っても良いと思いますわ」  いっぱいの基準、低!  私のいっぱいの基準、低すぎでしょ!? 「じゃあ、僕がいればいっぱいって言っていいんだね!」  今度はボクっ子の私来た!  あんたはなにかネタを持ってきたの? 「ううん?ぜーんぜん!だって僕にネタがないのに僕がネタを出せるわけ無いじゃん!」  え、僕と僕?な、なんか言ってることがワケ解んないけど、とにかくネタはないのね? 「うん、ないよ!」  人数をいくら増やしたって、ネタが出ないんじゃ意味ないんだけど! 「吾輩もおるぞ!」  吾輩って……私のキャラ崩しすぎでしょ!  まあそこは譲っても……あんまり期待はできないけれど、その我輩さんはネタはあるの? 「ないぞ!」  なにが「ないぞ!」よ!  そんなこと、胸を張っていうんじゃないわよ! 「わっちもおるでよ」  どんどんキャラが発散している感じがする。  あんたはネタはあるの? 「ないでありんすよ」  もー!ないなら出てこないでよ!  あんたたちの相手をしているうちに、締め切りが来ちゃうじゃない! 「あちきにまかせんしゃーい!」  今度は何キャラよ。  ネタはあるの? 「ないっすー!」  じゃあ出てくんなー! 「妾ならば力になれるかもしれぬぞ」  今度は随分雅な私が出てきたわね。  ネタは? 「ホホホ、妾がネタなど持っているはずもありんせん」  じゃあなにしに来たんだよ!  ……ああっ!もう残り三十分しかないじゃない!  どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!! 「ふっふっふっふ」  ……。  またどうせもうひとりの私だろうけれど一応聞くわね。  あんたは誰? 「ミーはユーザンスよ」  こら、パクリキャラやめ! 「そんなこと言っていいザンスか?」  なによー? 「ミーの登場で1200文字を超えたザンスよ。つまり応募規定の一つを満たしたザンス」  はぁ?お題を見て言いなさいよね! 「最高のお祭り」よ!「さ・い・こ・う・の・お・ま・つ・り」!  文字数満たしただけじゃ、ダメなのよ! 「フフフフフフ」  な、なによ? 「ところがミーには妙案があるザンス」  ほんとに?嘘だったらただじゃおかないわよ。あとそのパクリキャラ、色々やばいからやめて。 「あ、はい」  おう、やめるんだ。まあそれはいいわ。妙案ってなによ、早く言って! 「つまりここで原稿が仕上がった祭りをやれば!」  ……?  え、それって……アリなの? 「アリでしょう!物書きにとって、脱稿こそ最高の瞬間!ならばそのときに行われる祭りが最高でないことがあり得るだろうか、いやない!」  わざわざ反語使ってまで……。  でもお祭りをやろうって言っても、今からじゃ準備が……。 「なにを言ってるの」 「私達がいるじゃないですか」 「僕たちが力を合わせれば、なんだってできるよ!」 「吾輩も力を貸すぞ」 「わっちも今宵は気分が良うござんす」 「あちきだって忘れないでよね!」 「妾もおるでよ」 「僭越ながら自分も協力いたします」  ちょっと最後の誰よ?  ああ、元パクリキャラの私ね。  でも、ほんとに信じていいの? 「もちろんよ!」 「みんなやりましょう!」 「最高のお祭りにするぞー!」 「吾輩、張り切っていきますぞ!」 「今宵のわっちは一味違いますえ」 「あちきの力、見せてあげるよ!」 「妾も今夜は、存分に力を振るうぞえ」 「自分も、がんばります!」  本当に、本当なのね?  ああ、これで、これで!  私もコンテストに応募できるのね!  祭り囃子が聞こえるわ!  みんなが輪になって踊っているのが見えるわ!  出店からは美味しそうな匂いがしてくるわ!  ありがとう、みんな!  みんなみんな、ありがとう!  本当に、  本当に最高の  お祭りだわ!  翌朝、  過ぎ去った締切と、  真っ白な原稿が、  目覚めた私を待っていました。 (了)
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