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「も、申し訳ない。思わず気を抜いてしまったというか」  すると、大剣を地面に突き刺し腕を広げた。 「構わないぞ。むしろ、サムはよくしてきたが」  そう言って聖母のように微笑む。思わず、俺はあとずさってしまった。この世界の俺は赤ん坊か。こんなこと出来るがわけないだろ、ちょっと羨ましいけど。  俺が疲れて腰を下ろしていると、足音がした。振り返ると家の方から黄色い髪のパッセルが走ってくる。 「ねえねえ、泉に行かない?」  ききながらパッセルが俺に抱きついてきた。確かに、水浴びでもしたいな。 「いいぞ。どこにあるんだ」  すると、パッセルが指を差した。その先には小さな森があった。この世界なら徒歩ってことだよな。 「なら、さっそく行こうか」 「待って」  パッセルは髪につけていた羽根の髪飾りを取る。すると、一瞬で巨大なスズメになった。パッセルだったスズメは羽根を伸ばし、伸びをする。羽ばたいた風で髪や服が揺れた。 「パッセルなのか」  俺が訊くと、巨大なスズメは頷いた。そして、背を向けると、しゃがみこむ。翼で自分の背中を叩いてみせた。 「乗ってほしい、みたいだな」  ヒネーテがパッセルの仕草から察する。言われた通り、背中によじ登った。すると、急に羽ばたき上昇し始める。突風と揺れに振り落とされそうになった。羽毛が柔らかくて心地いいが、それどころではない。しがみつきながら横目で空を眺める。広大な自然が広がっていた。その一瞬の光景に目を奪われていると、今度は急降下する。到着した頃には頭は乱れていた。俺を降ろすと、またあっという間に人間の姿に戻る。 「ここだよ」  改めて確認すると、そこだけ森が拓かれ泉が広がっている。泉は白く濁り、湯気が立っていた。温泉のことだったのか。
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