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「・・・・・・ねえ、イサムってば」  気がつくとパッセルが正面から俺を揺さぶっていた。俺は慌てて後ろを向く。 「なんで俺の前にいるんだよ」 「だから、平気だって言ってるじゃん。で、好きな人は?」 「いや、別に。ただ、慕ってくれた人はいた気がする」  俺が言うと、パッセルは嬉しそうに声を上げた。こういうのに食いつくタイプなのか。 「前の世界でもイサムはモテモテだったんだね」 「モテてたわけじゃ。というかこの世界の俺はモテる要素あるか。剣も魔法も使えないし」  問いかけると、パッセルが唸る。そして、閃いたように言った。 「なんか頑張ってた気がする、色々」 「な、なんだそれ」 「頑張り屋さんだったよ、うまくはいってなかったかもしれないけど。だから、みんな大好きなんだと思う」 「なるほどな」  努力家だったと思えばこの世界の俺と似ているかもな。この世界が合っていなかったってだけで。でも、もっと努力しなきゃな。 「俺、もっと頑張るよ」 「じゃあ、あたいも頑張る」 「頑張るってなにをだよ」 「ひみつ」  俺の後ろでパッセルの笑い声がする。 「イサムはなにを頑張るの」  その質問に俺は頭を悩ませた。特別な能力がない俺にできることはあるのか。俺が考えているとパッセルは閃いたように声を漏らす。 「マギサのお手伝いとか、どうかな?」  マギサって、あの魔法使いか。ふと、初めて会ったときの悲しげな顔を思い出す。他の2人とは関係が少し違いそうだな。 「それじゃ、やってみるか」  湯に浸かりながら伸びをして、空を眺めた。
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