14

1/1
前へ
/19ページ
次へ

14

 そう言われ、屋台に並べられた液体の入った瓶に映った自分を見た。顔をしかめ、まさに考える人のようだった。俺はため息をつき、白状する。 「実は前の世界では結構凄かったんだ、俺。でも、今はやっぱりできないことばかりで。サムって奴もそうだったんだろ? なのに、なんでダメな俺と一緒にいるんだ?」  俺に質問をぶつけられ、マギサも悩むように唸った。厳しい現実を突きつけられたらどうしよう。自分で訊いたはずなのに、荷物を持つ手が震えた。しばらくして、マギサが口を開く。 「言葉にするのは難しいのですが・・・・・・自分がダメだと自覚しているからですかね」  彼女の答えに俺は首を傾げた。 「私とサムは幼なじみで、彼は勇者に選ばれましたけど、本当になにの才能もありませんでした。でも、サムは私を応援するなど、できることを精一杯してくれました」  できることを精一杯やるか。ふと、過去の自分を思い出す。前の世界では、勉強やら運動やら当たり前のようにできていたし、精一杯とは無縁だったな・・・・・・。 「だから、自分にできることを探している貴方も素晴らしいと思います」  突然、柔らかい表情から一変して真剣な眼差しになる。 「本当に悪いのは魔王のような自分の非を認めないことです」 「魔王って本当は弱いのか」 「はい、魔王自身はそれほどの力を持っていません。しかし、魔王はそれを認めず、手下の力を使って世界を滅ぼそうとしているのです。それを食い止めるのが私たちの使命なのです」  使命を語るマギサの瞳から俺は目を背けた。さっき来たばかりの俺がそれに賛同しても嬉しくはないだろう。でも、彼女たちのためになにかしたい・・・・・・。街や市場にあるものを見ていたそのとき、ふと過去の光景が浮かび上がった。  小只に色々言われてオフィスを出ると、一人の女子社員が立ちふさがった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加