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16
「どうかしましたか?」
再び現実に戻ったのか、目の前にはマギサがいた。
「いや、俺も欲しいものができて。あの、味を整える・・・・・・調味料で通じるかな」
俺が訊くとマギサは案内してくれる。その表情は少しずつ穏やかになっていった。
彼女の後ろについていくと、ある屋台に到着する。そこには様々な粉や液体が並んでいた。しかし、今まで見たことのないほど種類が豊富で食べられるのかすら疑わしい物まである。
「お探しのものは見つかりましたか?」
マギサに訊かれ、とりあえず俺は調味料の入った入れ物たちを眺めた。前の世界と似たような調味料を選べば、なんとかなるだろう。しばらくすると、店員がスプーンを俺に差し出した。
「そんなに気になるなら味見してみたら?」
店員に指摘され急に恥ずかしくなる。そんなに見ていたのか、俺。狼狽えていると、店員はさらにスプーンを突きだした。ひとまず受け取ると、まず俺は白い粉のような調味料をすくう。色と粒の大きさからして・・・・・・塩か砂糖か。緊張しながらも口に入れてみた。一瞬にして唐辛子のような辛さが広がり、噎せる。
「大丈夫ですか?」
マギサが心配して背中を擦った。俺は咳き込みながらも頷く。
「平気だ。想像と違っただけだから」
次に、緑の液体に手を伸ばす。野菜っぽい色と濁り方からして青汁みたいだが、味はどうだろう。スプーンに数滴入れ、口に運ぶ・・・・・・溶けた生クリームのような甘さだった。欲しい甘みとは違う。それに料理の見た目が不味くなりそうだ。こうして、俺は味を確かめては調味料を選んでいった。
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