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 太陽が真上に登る頃、俺は釜戸の前で火打石を打っていた。この世界ではこれを使えばつくらしいが、一向にその気配はない。石を鳴らし続ける俺をマギサたちが見つめている。 「やっぱりイサムには難しいんだよ」  パッセルは持っていた石を取ると、一つ打ってみせた。非力そうな彼女ですら、火花が散る。それなのに俺は・・・・・・。 「それなら私がつけますよ」  マギサが杖を薪の方へ向けたのを俺はすぐに手で制止させる。 「意味がないんだよ、それじゃ。俺にやらせてくれ」  そう言って打ち続けた。断ったのにマギサもパッセルもヒネーテも見てくれている。まるで子どもを見るような眼差しに顔が熱くなった。中身は大の大人なのに・・・・・・。恥ずかしさを跳ね飛ばすように火打石を打つと、火花が散り始める。すぐに薪へ近寄り、火をつけた。 「おぉ、すごい」 「イサム、よくやったな」 「褒めるには早い。まだ行程があるんだからな」  ヒネーテやパッセルが褒めたが、俺は続けて木の板で薪を扇ぎ、火を大きくしていった。鍋を温めている間、野菜や肉を切っていく。だが、前の世界とは違い切れ味が悪く、皮を剥くことも難しい。力を入れているうちに押さえていた指に痛んだ。 「・・・・・・っ!」  親指の皮膚は切れ、血が出てくる。痛みを堪えようと拳を握りしめていると、マギサがその手に触れた。すると、淡く光り始め、傷が塞がり痛みがなくなる。そして、テーブルに横並びになり、包丁を取った。 「魔法を使うのは今回だけですから。それに貴方の切り方では何度も切ってしまいますよ」  そう言ってマギサは野菜に包丁を添え、そっと引く。すると、自分がやったときよりもすんなり切れていった。この世界の俺は非力なのか。考えを察したのか、マギサは再び手を握る。 「大丈夫、コツを掴めばすぐできますから」  俺に微笑むマギサの手は温かかった。
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