金がいる

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金がいる

俺には金がいる。 無けなしの金で買った、半額弁当を買った帰り、 夜空を見上げながらそう呟く。 職は無い。 職場は効率化の為、一斉解雇をしてロボットを取り入れた。 他もそんな感じでどこも取り合ってくれない、 元々、収入が少なかった俺には貯金も無い。 明日を生きるのに手一杯だ。 「ただいま」 「おかえり…ゴホッ…なさい」 「あんまりムリするな…」 今は母と2人暮し、 母は、体が弱く寝込んでいる。 病院に行きたくても金が無ければ行かせてやれない。 バン!!…… 玄関のドアが、勢いよく叩かれた。 「またアイツか…」 バン!!バン!!バン!! このままでは扉が壊れる、 早く帰えらせよう。 俺は、憂鬱になりながら扉を開く。 待っていたのは、絵に描いた様な、如何にもらしいヤクザだった。 「金が無い、貸せ」 またそれか……返したことが1度でもあったか? 「こっちだってある訳ないだろ!」 「何だ、その言い草、俺は、お前の父親だぞ!!」 ……コイツを父親と思ったことは1度だって無い。 ゴホッ…ゴホッ ……また、母が咳き込み始めた、 早く帰らせた方がいいな。 「だからって、無いから仕方がないだろう」 そう言うと相手は少し考え、 「なら、明後日までにどこかから借りて来い、明後日また来るからな」とだけ言って帰っていった。 「…クソ野郎が」 アイツが見えなくなってから、そう呟き、母の元へと帰る。 できるだけ、母には無理させたくない。 あんな父から俺を護ってくれた母には辛い思いをさせたくない。 だから…どうしても… 「飯にしよう母さん」 俺には金が必要だった。
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