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僕たちも不安を紛らわすようにそれぞれの場所で片付けや掃除を済ませる。
ホールを一緒に掃除していた彩音が、不安げに口を開いた。
「……明日、休みになるのかな? 予約どうだった?」
「今日の昼の時点で三組だったはずだから少ないけど、
その後で予約が入ってるかも」
ウェブや電話の予約の対応をしているのは閑なので、事務室のPCを確認しないと正確な数はわからない。
「掃除終わったらすぐ確認する。
休みになるようなら明日の朝一で連絡しないと」
いつ治るのか、店を休みにすべきなのか、考えなくてはいけないことはいくらでもある。
掃除を終えて、店の隅々まで確認し、バックヤードに戻る。
まき乃さんたちはまだ仕事をしているようだったので、彩音に顧客カードの記入を任せ、僕は事務室で明日の予約を確認していた。
一組一名様が増えていた。
「閑!」
彩音の声で僕も事務室を出る。
閑だけで、遠也はいなかった。
厨房の二人も彩音の大声でバックヤードに出てきた。
集まったみんなの前で、まず閑は頭を下げた。
「ごめん。俺の監督不行届だ」
閑は長いため息をついて苦笑する。
「遠也は帰らせた。あいつ大分寝てなかったみたい」
どうやら、遠也はまだメインの開発を諦めていなかったらしく、家で徹夜で作業を続けていたらしい。
「めちゃくちゃ怒ったよね。久しぶりにあんな怒ったわ」
バックヤードの椅子に腰掛け腕を組む。
僕も、スタッフの体調を把握できていなかったことに責任を感じた。
サービストップは僕だ。客席で起こることすべての責任を負う、自分に責任がないとは思えない。
それに最近は、閑とのことを思い悩んで、遠也のことを気にかけている余裕がなかった。
「いや怒ったとか、あんたの話はいいから。
遠也どうなの? 店立てるの?」
彩音の声は不安から尖っていた。閑が視線を俯けた。
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