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「んー、厳しい。 軽い捻挫だから治るまで一週間もかかんないとは言われたけど」 「それじゃあ……」  三日後のムニュ・デギュスタシオンの日は遠也は厨房に立てない。  彩音が気づいて大声を上げた。 「えっじゃあどうすんの?」 「明日は予約少ないけど、どう?」  閑の問いに、まき乃さんが考え込んでから頷いた。 「物量的には、二人で回せる」  名目上コミとは言え、まき乃さんはレストランでスーシェフをしていた人だ。シェフがいない状態で店を回したこともあるだろう。  彩音が焦って手を振った。 「それより、三日後でしょ。デギュスタシオン!」  その通りだ。明日以上の予約が入っている上に、作る料理の数も多い。  遠也無しにはできるわけがなかった。 「予約数は?」  確かめるまき乃さんの声に、閑が静かに返した。 「微妙な時間の予約が多いから一回転で前より客数少ないけど、 一応満席」  お詫びの連絡をして、店のSNSとホームページも……としなければいけないことは頭を巡るが、目の前が白くなりそうだ。  やっと上向いてきた中で、いきなりイベントを中止して店を閉めたら、信用はどうなる。  うちの店が広まったのはSNSのおかげだ。お客様を裏切ったとき、それはまたすぐに広まる。  そして、今度は有名なお客様一人の意見ではなく、幾人もの実感の伴った言葉として、拡散されていく。  それ以上に、今回店を休むことになったら、全て店側に原因があるのだ。
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