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「だから、こっちはデクパージュで納得してねーんだよ。 いつもより厨房の人数も増える、普通に回るだろ」 「閑には、絶対に無理だ」 「何でだよ」  彩音もアワアワして口を挟む。 「いや、隼人何言ってんの?」 「嫌ならいい。僕は降りる」  ケンシンの額に青筋が浮いた。 「あ?」 「当日、来ない」  ガン‼ と音がした。ケンシンが僕を突き飛ばして、ロッカーに背中がぶつかった。  痛みに顔をしかめるが、ケンシンからは目を逸らさなかった。 「テメェ何言ってんだ。 メートルがんなことやっていいと思ってんのか!?」 「だったら、デクパージュにしてくれ!」 「だから理由は!」  ケンシンに詰め寄られて言い淀む。  そこで生まれた沈黙を、閑が静かな声で破った。 「……お前って、本当、俺に優しいよね」  僕は目を固く閉じた。 「あのね、ごめん、隼人の言うとおりにして」  みんな、何故だという空気を出したが、誰かが何かを問う前に、僕が口を開く。 「それ以外に、次のディナー成功させる方法は無いと思ってください。 明日以降、予約のお客様にお伝えした上、 SNSとホームページで当日の説明します。 ルセットはアレルギーやNG対応があるので、 できるだけ早く確定させてください」 「……ヘルプはショウさんがいい。まき姉も連携とりやすいでしょ」  閑の静かな声にまき乃さんがわかったと返事をした。  ムニュ・デギュスタシオンは、閑がやることに決まってしまった。
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