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翌日から予約のお客様への説明に追われた。
遠也の料理だと思ったのにと、キャンセルされるお客様もいた。
仕方が無いことだ。
全てのお客様に謝罪をする。
それでも、その日のために予定を開けてくださっていたお客様がいる。その日、大切な誰かと過ごすお客様がいる。
せめてその場所を閉ざさず店を開けることが誠意だと信じて、電話をかけ続けた。
1,2人の少人数での予約のお客様から、いくつかキャンセルが入った。そして、四人一組のお客様からキャンセルが入った。厳しいお言葉もいただいた。
空いた分を埋めるという訳ではないが、SNSとホームページで今一度、今回のムニュ・デギュスタシオンで別なシェフが立つことを説明をする。
閑の経歴もともに記した。常連さんは閑の顔を知っているので、もちろん今のル・シエルのオーナーであることも記載する。
今日はディナーだけの営業だが、みんな、明後日のために朝から店に詰めていた。
店の電話が鳴る。閑が厨房にいるので、電話応対は僕がしていた。
新たなキャンセルだろうかと思っていた電話は、全く違っていた。
『予約お願いします!』
第一声の大声に驚いたが、いつも通りの対応をし、名前や時間、人数を確認する。
それが終わってから、お客様が堪えきれないといった様子で話し始めた。
『当日のシェフの大村閑って、
フランスでジャン・デュパンに師事してたあの大村閑ですか?
他の店でシェフもしてましたよね?』
「……はい、その大村閑に間違いありません」
その後も、電話やウェブから、大村閑の名前を見て予約を入れてくださるお客様がいた。
もう何年もこの世界から消えていた閑を、お客様が覚えていてくださったことに驚いた。
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