#13

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#13

 当日、外は冷たい雨が降っていた。  暗くなるような天気ながらも、スイーツコースは前回と同じく好評だったが、終わってすぐ、僕らはすぐ夜の準備に取りかかる。  厨房に入ったとき、思わず息を呑んだ。  白いコックコートを着た閑がいた。いつもと同じ明るい目だが、口元が少し緊張して見えた。  一瞬だけ目が合う。  それはバックヤードからのガタガタという音ですぐに逸れた。 「俺、できます!」  彩音に止められながらも、転げるように駆け込んできたのは私服の遠也だった。 「もう痛みも取れましたし……、 あの、体調崩したんは、ほんますんません。 反省、してます。 そやけど、これ以上迷惑かけるわけいかないです。 俺できます」  閑は遠也の手首を見た。まだ湿布が貼られている。 「あ、これはちゃんと剥がして洗って、 匂いやら絶対つかんようにします」  閑は黙って首を横に振った。 「休んどけ。悪化したらよくない」 「できます。ただの捻挫です。たいしたことない」 「駄目だ!」  厨房がしんと静まる。諭したり、子供っぽく大声で怒ってみせるのではなく、閑がただ激高して大声を上げるのを聞くのは初めてだった。
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