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「今日、皆さんが料理をおいしいと思って下さったのなら、 それは私の力ではありません。 度会シェフや、スーシェフの清澄まき乃、パティシエの山田謙信。 料理と調和するワインを選んでくれているのは、 ソムリエの八朔(はっさく)彩音です」  一度俯いてから、閑はまっすぐ僕を見た。 「そして、普段は味に関わらないと思われがちですが、 サービススタッフの力はとても大きいです。 この店は、私が人生のうちで最も信頼する 瀬田隼人にメートル・ドテルを任せています。 どうか、普段のル・シエルにもお越しいただけましたら幸いです」  大きな拍手を聞きながら、僕は閑だけを見つめていた。  しっかりと合っていた視線は、閑が頭を下げて途切れた。  拍手に送られて、厨房へ入っていく。  舞台のカーテンコールのようだと思った。  最後の、あいさつ。
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