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   *****  全てのお客様を送り出し、店を閉めた。  ホールでは、みんなと、今日ヘルプで来てくれた章太郎さんがグラスを持って、ワインを飲んでいた。閑の姿はない。 「あ、隼人も飲みなよ。 これはいいヴィンテージだよーそしてお手頃価格!」  彩音のテンションが高い。大変な仕事を終えた開放感があるのだろう。 「閑は?」 「『今日は高いワインが出てウッハウハだから先に帳簿つけたい』 って事務室行ったよ。さっきはあんなにいいこと言ってたのに」  と、まき乃さんもにっと笑顔を見せた。 「本当、大盛況だったね!」  そう続けられた言葉に、僕は返事ができない。 「やっぱり、すげぇな、あいつは」 「ワイン注ぐたびテーブル見てたからお腹空いたー」  遠也だけは、何も言わずに、ワインを飲んでいた。  ケンシンやまき乃さん、彩音に精一杯笑顔を返し、僕はバックヤードを通って裏口を出た。  顔を押さえる。堪えようと思ったのに、駄目だった。  ぼろぼろと、涙が溢れて止まらない。  盛況だった。成功した。閑の料理も、喜んでもらえた。  閑が店で出す料理を食べたことなんて、ほとんど無い。  でも、僕は、高校の頃から、何百、何千と閑の料理を運んできたんだ。  今日の料理は、成功した。それでも、  ――あのころの精彩さが、ない。  閑はもう、自分の料理ができないのだ。  悲しくて仕方が無くて、嗚咽が漏れるほどに泣いた。
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