#14

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 パンにオムレツ、タマネギのスープと僕の好物のキャロットラペ。 「いただきます」  スープを飲んで、ラペを食べる。 「これ、今日作ったんじゃないだろ」  しんなりとして、味が慣れていておいしい。さっき作ったばかりではない。 「……うん」  妙な間に眉を上げると、閑がもごもごと話す。 「隼人のこと考えるたびに、作ってた。 ……重いよな、キモいって言ってもいいよ、キモいもん」 「そんな風に思ってないよ」  閑が、スープを口に運びながら僕を見た。 「……あのさ、隼人」 「ん?」 「今度、一緒に、ヒロさんとシュザさんに会いに行こう。 うちの店に、来て下さいって言いに」  僕は、言葉にならなくてただ頷いた。  閑の中でやっと、踏ん切りが付いたのだろう。僕もそうだ。  これからずっと、閑とあの店をやっていくと、決めた。  スープのタマネギの厚さは、揃えようとしたのだろうが不均一で、やはり閑の料理は少し下手になっていた。でも、十分においしい。  ――あぁ、そうか。  閑の料理は、閑らしいのだ。明るくて楽しくて、ひょうひょうとしていそうだけど、冷静で実は完璧主義。  閑が自分を一番表現できるのが、料理だったのだ。彼はもう昔ほど料理で自分を表現できない。  だが、別に閑自身が変わったわけではない。  閑が特別なのは、料理ができるからじゃない。  僕はただ、料理を通して閑の特別さを知っただけだ。 「閑」 「ん?」  そう思ったら、自然にこの言葉が漏れた。 「愛してるよ」  閑の目が、輝いた。 「……俺も」  こういう気持ちを、少しずつ集めていこう。  仕事をしていないと、いつか離れてしまいそうだと怯える僕らの不安を、安心に変えてくれる気持ちだ。
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