#14

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 席を立った吉沢様を送る閑と一瞬目が合う。  やりとりを見ていたらしき彼は軽く頷いた。  僕は前を向く。  まだ、自分のシェフは閑だという想いは捨てきれない。  閑自身、料理との関わり方はこれからも悩むだろう。  そしてなにより、閑も僕も、仕事と、お互いへのかかわり方を、これからも模索し続けていくのだと思う。  でも、僕たちは過去に囚われたり、未来を妄信するほど、若すぎもしないし、老いすぎてもいない。  だから、今はただ前を見て仕事をする。  新しいお客様も、馴染みのお客様も、同じ笑顔で出迎える。 「お待ちしておりました」  主役は料理とお客様、僕はその間を今日も飛び回る。 「んー、おいしい。最高、天国だわ」 「ありがとうございます」  お客様にとっては天国。 「2番のメインまだ?」 「アレルギー対応と普通のとを同時に完成は厳しいんですよ!  まき乃さんこっち入ってください!」 「誕生日のテーブルで出す追加デザート、 今から仕込まないと間に合わないの!」 「悪い、これ終わったら俺も手伝う」 「今手伝って欲しいねん、作業が地獄になってんのは今なんですよ!」  厨房にとっては地獄らしい。  ――それでも、
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