#3

2/8

264人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
[ひばり]次いつこっち帰ってくるの? [すずめ]お母さんの誕生日近いけど、プレゼントそれぞれ買う? 皆でお金出し合って何か買う?  僕より四つ下のひばりとすずめは双子で、二人とも働いているが、そろって実家に暮らしている。 [つぐみ]今のところバッグとか、旅行のプレゼントもいいかなって話してるけど、お兄ちゃんも旅行一緒に行ける?  末っ子のつぐみは僕とは十歳違いの大学生で、つぐみも実家から大学に通っている。  僕は定休日に少し帰ることは出来るが、店が落ち着くまで旅行は難しいこと、お金の援助はするから、僕抜きで行ってはどうかと提案して、スマホをベッドに放った。  僕のうちは母子家庭で、兄妹で家のことを助け合いながら育ってきたせいか、家族仲がいい。  僕は全く料理をしないので、コーヒーだけ淹れると、キッチンで立ったままゆっくりと飲んだ。  飲みながら目を伏せる。  いつも寝る前は、その日のホールで何をどうして過ごしたか、店に入ってから退店するまでの流れを頭の中で繰り返す。  そして起きてからもう一度、就寝前よりは簡単に振り返りながら、改善点を挙げていく。  最近は、吉澤様もお忙しいのか、うちの店に対するネガティブな投稿も上がっておらず、急な予約のキャンセルは格段に減った。  それだけでも、仕込みの材料が無駄にならないので助かる。客足はまだまだ盛況とは言いがたいが、少し店の空気は上向いてきていた。  洗濯と掃除をして、昼食はどこかで買って、と今日のざっくりした予定を立てていると、ベッドに置き去りにしていたスマホがかん高い着信音を立てた。 「……もしもし?」  着信は閑からだった。店に関することだろうかと、不安に思いながら電話を取ると、静かな部屋にいた僕にはうるさい位の声がした。 『隼人、今日ヒマ? 今から出られる?』 「掃除と洗濯するから暇じゃない」 『特に予定ないんだな? えーと……じゃあ、昼前でいいや。一回店出てきて』 「はぁ?」  理由を尋ねる前に通話は途切れ、僕は携帯を床にたたきつけたくなるのを堪えて、憤然と掃除を始めた。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

264人が本棚に入れています
本棚に追加