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 ヒロさんに挨拶をしてから店を出て、二人で帰路につく。  僕は徒歩で、閑は僕の隣で自転車を押して歩いていた。  夜でもまだ蒸し暑く、街灯の明かりがほこりっぽい町を照らしている。 「ね、隼人、コンビニ寄らない?」  閑が立ち止まった。僕も立ち止まる。 「……アイス、おごるよ?」  僕は少し迷った。その迷いをどうとったのか、閑が僕の袖を引く。 「……唐揚げも、つけちゃうけど?」  その言葉に少し笑って、そうじゃないんだと首を振る。 「おごってくれるなら、水かお茶がいい」  本当は、僕ももう少し閑といたかった。 「了解。俺は普通にアイス食べますけども?」 「好きにしなよ」  二人で冷房の効いたコンビニに入り、閑はアイスや唐揚げやらコーラやらを買い、僕は結局水にした。  店の外で立ったまま、ペットボトルのキャップをひねる。  顎を上げて冷たい水をごくごく飲むのを、閑がなぜか見ていた。 「なに」 「ん、いや、唐揚げいる?」 「いらない」  閑がちょっとしょんぼりした。  しょんぼりしても口角の上がった顔が、なんだか可笑しい。 「お祝いしたい。隼人も、俺と同じで、今日が初めてでしょ。 料理運ぶの」  数度瞬きして、僕は所在なく足元のアスファルトを眺める。 「まかない食べられただけで充分だよ。だから、唐揚げは、大丈夫」  恥ずかしかったので言わないけれど、閑の料理を食べた後の気持ちを、今日はそのままとっておきたかった。  いつでも食べられるコンビニの唐揚げで上書きするのは惜しかった。  閑がソーダ味のアイスを咥えて、おいしそうに目を細めた。  店からの、まぶしいくらいの明かりが僕らを背中から照らしている。
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