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   *****  店では、最近は普段の営業と並行して、ムニュ・デギュスタシオンとスイーツコースの準備が進んでいた。  当日は完全予約制だ。  最初は告知を行っても中々予約が伸びなかったが、確定したメニューをお店のSNSに写真付きでアップするようになってから、予約が少しずつ埋まり始めた。 「はい、かしこまりました。お待ちしております。……失礼いたします」  向こうの通話が切れたのを確認してから、店の電話を置いた。 「どう?」  閑に尋ねられて、電話しながら予約の入力をしていたタブレットを見せる。 「スイーツコース、女性二名様」 「やっぱりそっちの方が埋まるの早いねー」 「だね。ただ、他の日の予約も増えてきたよ」  最初は、スイーツコースとムニュ・デギュスタシオンの宣伝のために始めたSNSだったが、デセールの写真はやはり見た目の美しさから反響があり、通常のランチやディナーへの問い合わせも増えていた。 「ありがたいねー、ほんと」 「うん、SNSには悩まされたり助けられたりだね。 あ、閑、できればランチタイムのない日に時間とって欲しいんだ」  閑が何度か瞬きをして不思議そうにしている。 「僕と彩音と、できれば厨房含めて、当日の流れ確認したい。 デセールのコースの間は、基本ケンシンとまき乃さんで回して、 その間遠也はディナーの仕込みしつつ、 余裕があればランチのアシスタントだよな?」 「うん。で、その後はいつも通り遠也が仕切ってディナーになる」 「ランチとディナーの合間が、結構忙しくなると思うんだよ。 それに、夜は単純にサーブの回数増えるし、 調理側もイメージ掴んでほしいから、 リハーサルっていうと大げさだけど……そういうのやっておきたい」  心配しすぎかもしれないが、当日は普段と営業形態が変わる上、お客様も多くなる。  ランチからディナーへの流れと、大体一人で何皿サーブ可能なのか、ワゴンなどでサーブする必要があるのか、色々と確認しておきたかった。 「ん、わかった。 それはやっといた方がいい思うから、みんなにも話して時間とるわ」  お客様が増えていることも、月一のイベントが控えていることも、店の空気を張りのあるものにしてくれていた。 「今日は結構予約入ってるから、頑張ってね」 「ん」  頷いてタブレットを置く。  遠也も開店したころより仕事に慣れてきて、以前のようにこちらの指示を聞かないようなことはなくなった。  その代わり、普段の仕事にメニュー作りと、忙しそうで心配だ。
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