264人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
無事に今日の営業を終え、掃除をして全体のチェックを済ませる。
バックヤードに入ると、私服に着替えた彩音が椅子に腰掛けていた。
「お疲れ。帰んないの?」
僕の言葉に視線を上げて、彩音が少し周りを気にしてから口を開く。
「隼人、今日暇? 私とケンシンと遠也で飲みに行くんだけど、
一緒に行かない?」
「まき乃さん行かないの?」
「まきさん、今日おんじゃくが定休日だから
『章太郎が家で待ってるからー』ってめっちゃウキウキして帰ったよ。
うらやましいくらい仲いいよね」
まき乃さんとショウさんは、確かにとても仲睦まじい。
たまに愚痴も聞くが、ショウさんがたまに夜更かししてゲームをするとか、却って微笑ましいくらいのものが多い。
「閑は?」
誘わないのかと聞くと、彩音は大げさに手を振った。
「抜き抜き。閑、酔うと下ネタ言うし、ゲラだし、
……今日はオーナー抜きで行こうよ」
「んー」
制服のベストを脱ぎながら相づちを打つと、彩音がからかうような声を出した。
「閑が来なかったら行かない?」
「いや、行くよ」
髪をほどいた彩音は、ゆるくパーマのかかった髪を軽くかき上げてスマホを見た。
「お店どうしよ。隼人、なんか食べたいのある?」
「洋以外」
「ざっくりしてんな~」
と言いながら、彩音はスマホで店を調べているらしい。
厨房から、作業を終えたらしいケンシンと遠也が出てきた。
「お疲れ。隼人も来るよな?」
ケンシンの問いに頷くと、遠也が少し驚いた顔をした。
僕が来ると思っていなかったのかもしれないが、別に遠也のために引く必要もないだろうと、彼の反応には気づかないふりをした。
「ねー、店決まんない。隼人は洋以外だって」
「俺がたまに行く沖縄料理屋にするか?」
コックコートをバサリと脱いで、ケンシンは彩音を気にせず着替え始める。
彩音も特に気にしないが、スマホの画面を見つめているのは、多少の配慮なのかもしれない。
「みんなそれでいい?」
特に異論も出なかったので、みんなで飲みに行くことになった。
最初のコメントを投稿しよう!