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 閑の手のひらがするりと下に落ちる。  へその下あたりで止まった指先が、僕の腹を押した。  その意味ありげな動きにくっと眉が寄る。  閑の唇が首筋に落ちて、次は耳の下を軽く吸い、耳たぶを食(は)んでから僕の耳に直接声を吹き込む。 「ねぇ、隼人も準備してきて、この中」  ささやきと同時にへその下に更に強く指先が食い込む。  は、と湿った息が漏れた。 「……ってあ、る」  ほとんど言葉にならなかった声を、閑は聞き逃さなかった。 「……っは、マジで? やっばいな、めちゃくちゃ、っ、興奮する」  首筋に噛みつかれ、閑の手のひらが遠慮なく肌をまさぐるのを感じながら、恥ずかしさにきつく目を伏せた。 「隼人も、俺としたかった……?」  僕は目を伏せたまま何も言わない。  彼が帰ってきた時に、気づかないようなふりをしておきながら、抱かれる準備をして待っていたのを知られてしまった。それがひどく恥ずかしくなった。 「ね、隼人の部屋行こう? 俺の部屋がいい?」  まだ恥ずかしさから何も言えずにいる僕を吐息だけで笑ってから、深く唇が重ねられる。濡れた音を立てて、唇が離れる。 「それとも、このまま、ここでしたい?」  ほとんど触れあったままの場所で囁かれて、唇が甘くしびれる。 「部屋が、いい」  顔を見られたくなくて閑にしがみつくと、閑は僕をきつく抱き返した。
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