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   ***** 「あ、あ、……の、どかっ、ん、あぁっ!」  互いの荒い息の中に、湿った音が混じる。閑の指が、僕の体の中の一点を抉るたびに、涙が目尻を伝う。 「隼人が、自分でここ準備して待ってたの、すごい興奮する」 「う、るさ……ぁーっ」  ゴムを被せた指を、ゆっくり抜き差しされて、もどかしさに首を打ち振るう。 「初めて体触ったときのことは覚えてる?  キスしまくって、俺が体触ったら、隼人俺の手掴んで嫌がって」  覚えてる、でも、思い出させないで欲しい。 「キスは普通にしてたのにさ、 隼人、これ以上は普通じゃないとか、男同士なんだからとか言い始めて」  そうだ、そう言って抗った。  当たり前にキスを交わすようになっていたけれど、それ以上に進んでしまったらどうなるかわからなくて、怖くて、僕は常識的におかしい、できないと言いつのった。  抗う僕を組み敷いた閑の声が、ひどく甘かったのを覚えている。 『視野の狭い奴らが言う常識以外のこと、何にも知らないの?  馬鹿だね、かぁわいい』 「あ、あ」  そのときの閑の声がフラッシュバックする。 『じゃあ隼人の言う、非常識で、しちゃいけないことたくさんしようか』 『すぐわかるよ。 すっげぇ気持ちいいだけで、何にも悪いことじゃないって』 「ぁっ……!」  閑の目が嬉しそうに緩む。 「あの時のこと、思い出しちゃった?」  ぎゅーっと、感じやすい場所を圧されて僕は声にならずに体を痙攣させる。  指がずるりと引き抜かれて、受け入れていたものを失った場所がひくつく。  掠れた甘い声、熱で曇った瞳、閑の声は興奮でわずかに上ずっている。 「俺たまんないよ、 あんなこと言ってた隼人が、 俺に抱かれるための準備して、一人で待ってたとか」  閑が起ち上がった自分のそこにゴムを被せて、ローションを垂らすと塗りつけるように扱く。  閑が僕と体を繋ぐためにそうしていると思うと、体がカッと熱くなる。  浅ましく喉を鳴らす自分が恥ずかしくてたまらないのに、それ以上に閑が欲しくてたまらない。
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