264人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
「あ、あ、……の、どかっ、ん、あぁっ!」
互いの荒い息の中に、湿った音が混じる。閑の指が、僕の体の中の一点を抉るたびに、涙が目尻を伝う。
「隼人が、自分でここ準備して待ってたの、すごい興奮する」
「う、るさ……ぁーっ」
ゴムを被せた指を、ゆっくり抜き差しされて、もどかしさに首を打ち振るう。
「初めて体触ったときのことは覚えてる?
キスしまくって、俺が体触ったら、隼人俺の手掴んで嫌がって」
覚えてる、でも、思い出させないで欲しい。
「キスは普通にしてたのにさ、
隼人、これ以上は普通じゃないとか、男同士なんだからとか言い始めて」
そうだ、そう言って抗った。
当たり前にキスを交わすようになっていたけれど、それ以上に進んでしまったらどうなるかわからなくて、怖くて、僕は常識的におかしい、できないと言いつのった。
抗う僕を組み敷いた閑の声が、ひどく甘かったのを覚えている。
『視野の狭い奴らが言う常識以外のこと、何にも知らないの?
馬鹿だね、かぁわいい』
「あ、あ」
そのときの閑の声がフラッシュバックする。
『じゃあ隼人の言う、非常識で、しちゃいけないことたくさんしようか』
『すぐわかるよ。
すっげぇ気持ちいいだけで、何にも悪いことじゃないって』
「ぁっ……!」
閑の目が嬉しそうに緩む。
「あの時のこと、思い出しちゃった?」
ぎゅーっと、感じやすい場所を圧されて僕は声にならずに体を痙攣させる。
指がずるりと引き抜かれて、受け入れていたものを失った場所がひくつく。
掠れた甘い声、熱で曇った瞳、閑の声は興奮でわずかに上ずっている。
「俺たまんないよ、
あんなこと言ってた隼人が、
俺に抱かれるための準備して、一人で待ってたとか」
閑が起ち上がった自分のそこにゴムを被せて、ローションを垂らすと塗りつけるように扱く。
閑が僕と体を繋ぐためにそうしていると思うと、体がカッと熱くなる。
浅ましく喉を鳴らす自分が恥ずかしくてたまらないのに、それ以上に閑が欲しくてたまらない。
最初のコメントを投稿しよう!