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「の、どか……」 「いれるよ?」  ぐっ、と押し入られて、受け入れやすいように息を吐く。 「あっ、んー……っ」  奥まで受け入れる圧迫感にめまいがして、無意識に閑に手を伸ばす。  閑が僕の手をとって指を組みベッドに縫い止めた。 「隼人、隼人……」  答えたいのに、もう甘ったるいあえぎ声しか上げられない。空いた手で彼の背に腕を回し爪を立てた。  お互いに果てた後も、セックスは一度では終わらず、閑にうつ伏せに返される。  膝を立てようとした僕を閑が手で押しとどめる。ぺったりとうつ伏せで寝た僕の上に閑が乗っかってきた。 「このまましたい。だめ?」 「だめじゃない、けど……う、ぁ」  最後まで聞かずに閑がまた僕の中に入ってくる。  一度達したばかりの体をまた開かれ、殊更ゆっくりと抜き差しされると声にならない快楽に体が反る。  もどかしさに腰が揺れると、ぐっと奥まで腰を押しつけられた。 「あぁっ、あ、閑、閑……!」  深い場所まで貫かれて頭がしびれる。  閑は僕の背に体を伏せて首や肩を舐め、優しく噛みついた。 「ごめんね、今日、寝かせてやれないかも」  閑は、そうできる時はできるだけ長く、できるだけ深く、僕と繋がっていたがった。  背後から、いつもとかけ離れた頼りない声が僕を「隼人」と呼ぶ。  人にはそう見せないけれど、閑はプライドが高いから、顔が見えないときしかこんな声を出さない。  もし振り返ったら、きっと閑は子供みたいな顔をしてるんじゃないだろうか。 「かわいい、隼人」  閑は、好きだとかそういう言葉を僕に言ったことはない。僕もなかった。  閑と付き合っているとも、思わない。きっと閑もそうだろう。  かといって、体だけと割り切るような乾いた関係でもない。そもそも、僕はともかく、閑は相手に不自由していないはずだ。  岸壁の命綱、荒波の浮き輪、何と言っていいかわからない。  ただ、日本から遠く離れたこの国で、この部屋の中でたった二人、お互いを必死につなぎ止め合っているような気がしていた。
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