264人が本棚に入れています
本棚に追加
「の、どか……」
「いれるよ?」
ぐっ、と押し入られて、受け入れやすいように息を吐く。
「あっ、んー……っ」
奥まで受け入れる圧迫感にめまいがして、無意識に閑に手を伸ばす。
閑が僕の手をとって指を組みベッドに縫い止めた。
「隼人、隼人……」
答えたいのに、もう甘ったるいあえぎ声しか上げられない。空いた手で彼の背に腕を回し爪を立てた。
お互いに果てた後も、セックスは一度では終わらず、閑にうつ伏せに返される。
膝を立てようとした僕を閑が手で押しとどめる。ぺったりとうつ伏せで寝た僕の上に閑が乗っかってきた。
「このまましたい。だめ?」
「だめじゃない、けど……う、ぁ」
最後まで聞かずに閑がまた僕の中に入ってくる。
一度達したばかりの体をまた開かれ、殊更ゆっくりと抜き差しされると声にならない快楽に体が反る。
もどかしさに腰が揺れると、ぐっと奥まで腰を押しつけられた。
「あぁっ、あ、閑、閑……!」
深い場所まで貫かれて頭がしびれる。
閑は僕の背に体を伏せて首や肩を舐め、優しく噛みついた。
「ごめんね、今日、寝かせてやれないかも」
閑は、そうできる時はできるだけ長く、できるだけ深く、僕と繋がっていたがった。
背後から、いつもとかけ離れた頼りない声が僕を「隼人」と呼ぶ。
人にはそう見せないけれど、閑はプライドが高いから、顔が見えないときしかこんな声を出さない。
もし振り返ったら、きっと閑は子供みたいな顔をしてるんじゃないだろうか。
「かわいい、隼人」
閑は、好きだとかそういう言葉を僕に言ったことはない。僕もなかった。
閑と付き合っているとも、思わない。きっと閑もそうだろう。
かといって、体だけと割り切るような乾いた関係でもない。そもそも、僕はともかく、閑は相手に不自由していないはずだ。
岸壁の命綱、荒波の浮き輪、何と言っていいかわからない。
ただ、日本から遠く離れたこの国で、この部屋の中でたった二人、お互いを必死につなぎ止め合っているような気がしていた。
最初のコメントを投稿しよう!