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「隼人、隼人かわいい」  閑とこうなるまで、僕は閑のプライドが高いことなんて知らなかった。  互いの肌の匂いも。  こんな時、どれだけ閑が甘ったるいのかも。 「のど、か、のどか……っ」  肌を重ねるたびに胸に迫ってくる何かを言葉にしなくて済むように、僕は何度も閑の名前を呼んだ。  長いセックスが終わった後、閑は肘を枕に僕を見つめていた。  いつもちょっと笑ったような顔ではあるが、それでも機嫌がいいのが見て取れた。 「明日、何する?」  僕はもう眠たくて、まぶたが勝手に閉じていく。  閑は空いた方の手で僕の腹のあたりをぽん、ぽん、とゆったりとしたリズムで叩いている。 「海の方行って、カフェかブラッスリーで飯食おうか。 ……あ、美術館でも行く? 隼人好きでしょ。 晩飯は俺が作るけど、隼人何食べたい?」 「……キャロット、ラペ」  どんどん、眠気で意識がほどけていく。 「ラペ好きだねぇ」 「初めて、食べた、閑の」  料理だから、とはもう言えず、呼吸が寝息のように深くなっていく。 「……」  閑が何か言った気がしたけれど、眠った僕には、それ以上わからなかった。
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