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すべての準備が整って、新しい店に移ったとき、僕たちは25歳になっていた。
閑はシェフ、僕は出世したもののまだシェフ・ド・ラン。
早く、早くメートル・ドテルになりたかった。この店も、ディレクトールのいる規模の店なので、それでもまだ閑には追いつけない。
でも、いつか、この店に骨を埋めるのか独立するのかはまだわからなかったけれど、閑のレストランでサービスのトップになるのだと、それだけが僕の夢だった。
レストランは、クラシックな料理にクラシックなサービススタイル、だが僕らが元いた店よりは幾分カジュアルで、観光に来た外国人や、バカンスを楽しむ家族やカップルで賑わっていた。
お互いにひどく多忙で、家に帰っても顔を合わせるのは休日程度だ。それも減ってきていた。
シェフの閑が多忙なのはもちろんだが、僕もメートルを目指すために、ゲリドン・サービスのためのデクパージュやフランバージュの訓練を積んでいた。
これはうちの店では、ジビエや、特殊なデザートの時に必要な技能で普段から使うものではなかったけれど、僕は楽しくて仕方がなかった。
これから学ぶことすべてが、今後の僕の役に立つ。
早く、閑に追いついて、隣に立ちたかった。
休日の午前は、時折前の店のスタッフに頼んで中国語を教えてもらい、僕は日本語を教えていた。
勉強は、興味をもってやっている分楽しかったけれど、年齢の分、頭の回転は下がっているのか、いつも終わると頭がふわふわした。
「ただいま」
部屋に戻ると、閑がソファに横になっていて、僕の声でぼんやりと目を開けた。
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