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   *****  荒い息の合間に、湿った水音が響く。  ベッドに這わされて、後ろから閑を受け止めていた。 「……っ」  絶対に声を上げたくなかった。  だが、慣れた体は湧き上がる快楽を抑えられず、歯を食いしばって堪える。  ふっと耳元で笑われ、肩がすくむ。 「隼人…、お腹ん中、気持ちよくなっちゃった?」  必死で首を横に振る。 「嘘ばっかり。お前ほんとかわいいね」  掠れた声と共にぐっと奥を突かれてのけぞりそうになるのも、声を上げそうになるのも、必死でこらえる。 「わかるだろ? ここ、俺のこれ大好きなの。 ほら、ちゅうちゅう吸いついてきてるのもさ」 「……っあぁ」  ゆっくりと腰を引かれて僕はついに根を上げた。  自分のそこがざわめいて、出て行こうとする閑を引き留めるように締め上げる。 「奥がいい? 浅いところめちゃくちゃにされたい?  隼人のきもちいことしよ」  俯いた目頭から涙が伝う。僕はまた首を横に振る。  閑はこうやって、僕にわからせる。  いくら衝突しようと、同じ立ち位置で彼と争おうとしても、結局閑に触れられれば僕が屈服してしまうことを。  閑が僕に与えているのは甘く掠れた声の睦言、もどかしいほど優しい指先、とろけそうな快楽だけだ。  それでもこれは、僕を屈服させる行為だった。  僕の体も声も、そうしたくないのに閑に勝手に媚びてしまう。 「い、やだ……」 「嫌がってる、声じゃないよ……。ここっ、好き?」  快楽に熱い息を吐きながら閑が僕を責め立てる。 「あ、あ!」  目を固く閉じて、早く行為が終わることを願った。  体を重ねて、恋人とさえ呼べないいびつな関係を続けて、いつまで僕らは一緒にいられる?  僕はただ、閑に追いつきたかった。  閑と対等になりたかった。  だから、仕事の方がずっと、ずっと大切だった。  僕らにとって確かなことは、閑の料理を僕が運ぶという約束一つじゃないか。  ――僕は、閑の隣にいたいだけだ。
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