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「次もう一回サービスの流れ確認するんで、
厨房は一応、どんな具合で調理進んでいくかイメージしといて下さい。
場合によっては、席の配置ちょっと変えて、ワゴン使うことも考えます」
そう言って、予約の人数や現時点での席の配置をみつつ、僕と彩音で動いてみる。
「予約開始十五分遅れがこことここのテーブルです」
もちろん、食事の進みはテーブルによって異なるが、今までより人数も料理も多いので、やるとやらないではかなり気持ちが違った。
「あ、隼人、このタイミングだと、
食前酒終わってワインのサーブに入るから」
「あー、そうか」
彩音や、厨房とも話し合いながら流れを確認していく。
まだ確認したいことはあったが、この後のディナーのために一度切り上げ、紙やサーブの確認のために出した皿を片付け始める。
「今日出た意見まとめたら、
流れ作り直してラインか何かで共有するんで確認しといて下さい。
前日、もう一回今日よりざっくり確認しましょう」
それぞれから返事があり、みんなディナーの準備に散っていく。
「閑、どいて」
「はーい」
素直に席から立ち上がる。
リネン類を取ってきて、テーブルセッティングを始めると、閑は壁際で僕を眺めていた。
「仕事無いの」
「……ある」
そう言いながらも、閑は去って行かない。
無視して僕は自分の仕事を進めた。
結局の所、閑は今も昔も、僕が言うことをきくと思っているのかもしれない。
だから店に誘ったのだろう。
もうそれを怒ろうとも思わない。今はもう、ただの雇い主と従業員でしかない。
「隼人、ムニュ・デギュスタシオン、楽しみだね」
「そうだな。……仕事しなよ」
「うん」
頷いたけれど、閑はそのまま、僕の作業を眺めていた。
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