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   *****  狭いアパートに帰り、そのままドアを背にずるずると玄関に座り込む。  自分の頭を抱えた。  ル・シエルで働き始めたのは、閑と同じように、自分も過去のことなど気にしていないからだ。  今後はただのスタッフとしてつき合えると思ったからだ。  ――違う。  閑にそう思わせたいというただの見栄だ。 「……はは」  掠れた自嘲が漏れた。  ――それも違う。  本当は、過去を気にして、この先を期待していた。  もう一度、閑とやり直せるんじゃないか、そんな浅ましい思いで仕事をしていた。  僕は、閑欲しさにこの店に来たんだ。  それを見抜かれていた。  苦しくて涙が零れる。  僕はサービスの仕事が好きだ。  そして、まだ閑が好きだ。  この仕事が好きなのも、閑とやり直したい気持ちがあるのも嘘じゃない。  だけど、閑に好かれるために、メートルの仕事を利用していると思われるのだけは耐えられなかった。  でも、もし閑にそんな風に扱われたら、きっとそうなってしまう。  閑の歓心欲しさに仕事をするようになってしまう。  そうなったら結局、いつか両方失って終わりだ。  僕を知らず支え続けてくれたこの仕事まで失ったら、もう何も残らない。    僕は、袖口で涙を拭った。  この想いごと消し去りたかった。
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