145人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
SCENE 96 建設中のショー・パブ ラズ
「もうちょっとスピード出せねえのかよ? 慌てるそぶりくらい見せろ、でくの坊」
ラズが、運転している柳の部下に毒づく。
ダイゴほどではないが大柄でガッチリしている男だ。チラリとラズに視線を向けると、苦々しい表情になった。
「おいおい、かなり出してるぜ、これでも」
助手席で苦笑する柳。
超高級車なので静かだが、それなりに速い。しかし、ラズは気が急いてしまう。
「落ち着けよ、ラズ」ダイゴが宥める。「マサヤはあれで、窮地になったら何とかする男だ。そう簡単にはやられねえよ。ここしばらくのつきあいでわかってきた。アイツはしぶとい」
「それはわかってるけどよ……」言いかけ、ハッとなるラズ。「べ、別にマサヤの心配してるわけじゃねえよ! 連中のいいように進んでるのがムカつくだけだっ!」
「わかった。わかった」
怒鳴り散らすラズに、やれやれと肩を竦めるダイゴ。
柳が助手席からチラリとラズを見た。
「なるほど。7色の言語を操る男に惚れた、7種類の武器を駆使する女……なんてな。結構お似合いだ」
どこか楽しそうに言う柳。
「てめぇ……」険しい表情になり銃を手にするラズ。「それ以上喋んじゃねえ。でなきゃあ、せっかくの高級車がてめえの血と脳みそで汚れることになるぞ」
「よせって、ラズ」慌ててダイゴが抑える。「もう着くぞ」
フロントガラスの向こうに、工事中らしい建物が見えてきた。そして、その手前にトラックが――。
柳の車が停まる。それと同時に、ラズとダイゴが素早く降り、銃を手にしながらトラックに駆け寄った。
柳の部下が続く。最後に柳がゆっくり歩いて行く。
後から別の車両も数台やって来る。皆、柳コーポレーションの構成員が乗る車だ。
最初のコメントを投稿しよう!