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ボートが波止場に横付けされる。舫をかけている暇も惜しみ、ダイゴは手を差し出し、イーゴリと思われる子供を引き上げた。続いてオレグも。
次の瞬間、助手席で銃声。ラズの銃が火を噴いた。
「な、なにを?」と思わず叫ぶマサヤ。
「あれは攻撃型ドローンだ。見ろ、どれも兵士が一人ずつ乗ってる」
確かに、ラズの銃弾を避けるように旋回したドローンには、それぞれ小銃を構える男達。
「ぼ、僕らを狙ってくるの?」
マサヤが怯えながらも訊いた。
「そうじゃない、っていう理由があるなら教えてくれ」ラズが叫ぶように言う。「それにしても、パーク内のろくでなしどもがあんな最新鋭兵器を持っているはずがない。何だ、あいつら?」
「わからん。ただ、柳の言っていた得体の知れない連中ってのは、単なる悪党じゃないらしい。それなりに戦闘ができるヤツらだ。とにかく走り抜けるぞ、マサヤ」
ダイゴの声に頷くマサヤ。親子とダイゴが走ってきて、車に飛び乗るようにした。
それと同時に、上空から銃撃がはじまった。
ジープのそばの路面で弾丸が次々火花を散らす。
「発車しろ、マサヤ。蜂の巣になりたくなきゃ、急げ」
叫ぶダイゴ。言われるまでもなく、マサヤはアクセルを踏み込んだ。
次々に銃弾が撃ち込まれてくる。だが、相手も飛びながらだからか、命中精度は低い。
「チッ、どこの兵隊さんだか知らないが、ナメたことしたら火傷するって教えてやる」
ラズが助手席で立ち上がった。ダッシュボードに片足をかけ、銃を上空へ向ける。
猛スピードの車上でそれをやるのだから、もの凄いバランス感覚と運動神経だ。
それだけではなかった。ラズの撃った弾丸は、確実に攻撃型ドローンの操縦者に命中する。ゆらゆらと揺れながら、一機海へと墜落していった。
更にもう一機も餌食にするラズ。恐るべき腕前だ。
慌てたのだろう、他のドローンが様子を見るように旋回しながら離れて行く。運転しながらだとわからなかったが、ダイゴが「あと5機だ」と叫んだ。
ラズの射撃を見て、後部座席のオレグが目を丸くする。
「驚いたな。この国では、こんな少女が凄腕のガンマンなのか」
ロシア人の彼からすると、小柄なラズは子供のように見えるのだろう。
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