SCENE 10 波止場

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 「彼女はこれでも警察官です」  マサヤが声を張りあげると、ヒューと口笛を吹くオレグ。驚いたように首を振っている。  「何話してんだよ、ロシアのダンナと」  ラズが一旦座りながら訊いてくる。  車は猛スピードで波止場を離れようとしていた。ハンドルをきりながらなので、マサヤはまともに応えるのが難しく「こんな美人がいるなんて驚いたってさ」と適当に言った。  「いやぁ~ん。嬉しぃ!」恥じらうような仕草をするラズ。だがすぐにギロリとマサヤを睨む。「……なんてね。いい加減なこと言ってんじゃねえ、この野郎! おまえ通訳じゃなくて詐欺師だろう? この仕事が終わったら、その口に弾丸たっぷり喰わせてやるからな」   「無事に終えられたなら、何とでもしてくれよ。それに、僕は魔術師とも詐欺師とも呼ばれたことはないからね!」   ヤケになって応えるマサヤ。  「のんきに愛の言葉を囁き合ってる場合じゃないぞ!」ダイゴが後部座席から声をかけてくる。小銃を上空に向けていた。「また来る。ラズ、死神さえ撃ち落とすと言われる腕前を見せてくれよ。マサヤ、波止場を離れたら左の路地へ進め。それならヤツら、狭くて安心して飛びまわれない」  「任せろ」「了解」2人同時に応え、顔を見合わせる。ラズがチッと舌打ちした。  ダイゴの言った方へと車を進ませるマサヤ。確かに倉庫や古いビルに囲まれており、空からの攻撃は難しくなりそうだ。だが、車の運転にしてもいっそうの注意が必要になる。マサヤは手の平に汗をかきながらも、しっかりと前方を見据えた。すると……。  「わっ! やばい、やばいよ」  路地から車が3台向かってくる。どれも古くさいタイプのトラックだが、その荷台に大勢の人間が乗っていた。みな人相の悪い連中だ。それぞれが銃やら大型ナイフ等の武器を手にしている。  「くそっ、あれは、世界公園(ワールドパーク)内のはぐれた連中だ。どこのグループにも属さないが、金のためなら何でもやる、とことん腐った奴らさ」  吐き捨てるように言うラズ。  「どうやら、ドローンの兵隊は俺達を追い立てるのが目的だったらしい。世界公園(ワールドパーク)内の事は中の荒くれどもにやらせる方がいいと考えたんだな」
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