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「彼女はこれでも警察官です」
マサヤが声を張りあげると、ヒューと口笛を吹くオレグ。驚いたように首を振っている。
「何話してんだよ、ロシアのダンナと」
ラズが一旦座りながら訊いてくる。
車は猛スピードで波止場を離れようとしていた。ハンドルをきりながらなので、マサヤはまともに応えるのが難しく「こんな美人がいるなんて驚いたってさ」と適当に言った。
「いやぁ~ん。嬉しぃ!」恥じらうような仕草をするラズ。だがすぐにギロリとマサヤを睨む。「……なんてね。いい加減なこと言ってんじゃねえ、この野郎! おまえ通訳じゃなくて詐欺師だろう? この仕事が終わったら、その口に弾丸たっぷり喰わせてやるからな」
「無事に終えられたなら、何とでもしてくれよ。それに、僕は魔術師とも詐欺師とも呼ばれたことはないからね!」
ヤケになって応えるマサヤ。
「のんきに愛の言葉を囁き合ってる場合じゃないぞ!」ダイゴが後部座席から声をかけてくる。小銃を上空に向けていた。「また来る。ラズ、死神さえ撃ち落とすと言われる腕前を見せてくれよ。マサヤ、波止場を離れたら左の路地へ進め。それならヤツら、狭くて安心して飛びまわれない」
「任せろ」「了解」2人同時に応え、顔を見合わせる。ラズがチッと舌打ちした。
ダイゴの言った方へと車を進ませるマサヤ。確かに倉庫や古いビルに囲まれており、空からの攻撃は難しくなりそうだ。だが、車の運転にしてもいっそうの注意が必要になる。マサヤは手の平に汗をかきながらも、しっかりと前方を見据えた。すると……。
「わっ! やばい、やばいよ」
路地から車が3台向かってくる。どれも古くさいタイプのトラックだが、その荷台に大勢の人間が乗っていた。みな人相の悪い連中だ。それぞれが銃やら大型ナイフ等の武器を手にしている。
「くそっ、あれは、世界公園内のはぐれた連中だ。どこのグループにも属さないが、金のためなら何でもやる、とことん腐った奴らさ」
吐き捨てるように言うラズ。
「どうやら、ドローンの兵隊は俺達を追い立てるのが目的だったらしい。世界公園内の事は中の荒くれどもにやらせる方がいいと考えたんだな」
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