SCENE 10 波止場

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 「と、とにかく進めないから、戻るよ」  ハンドルを握りながら叫ぶマサヤ。  「連中に狙いを定めさせるなよ。馬鹿正直に安全運転してたらぶっ殺すからな」  ラズが言う。後部座席でオレグが銃を取り出すのがチラリと見えた。ずいぶんと太く見える拳銃だ。ロシア製だろうか?  「ラズ、勝算は?」  「五分五分だな。トラックのアホどもだけだったら片付けてやるんだが、謎の兵隊さん達がどの程度で、どんな動きをするのかわからない」   ダイゴとラズの会話に「そんな、五分五分じゃ困るよ」と情けない声で割って入るマサヤ。  「確率を上げたかったら、とにかく動きまわれ」  叫ぶように言うと、ラズはまた上空のドローンを撃つ。敵も慣れてきたのか、旋回して避けている。  後から銃撃。トラックの連中が乱射してきた。ダイゴが小銃で反撃している。オレグも撃ち始めた。  「おらっ、待ちやがれ。この腐れポリども」  「あのメス猫とゴリラを殺せ」  「いや、ラズの方は、生かして捕まえて裸にひんむいてレイプする。ヒーヒー言わせてやるぜ」  後から口汚い罵声がいくつも聞こえてくる。間違いなく、世界公園(ワールドパーク)の荒くれどもだ。  「え~?!」とラズが脅えた表情で身を竦ませる。「ダメぇ。そんなのイヤっ! お願い、許してぇ」  泣きそうな顔でイヤイヤをするラズ。だがすぐにカッと目を見開き「……って、上等だっ! バーカ! 私を気持ちよくさせてみやがれ」と怒鳴った。  なんて娘だよ……。呆れかえるマサヤ。  「あの野郎ども、本当なら一人一人頭の皮を剥いでやりたいんだがな」  ダイゴが憎々しげに言う。小銃を乱射しながらだ。  トラックのうち一台に命中し、ボンネットが跳ね上がるように開く。ブレーキの軋み音が響き、大きく蛇行した。そして、倉庫の壁面に激突する。  「うわぁ」とか「ぎゃあ」という叫びとともに、乗っていた者達のうち半数は動けなくなった。だが、軽傷らしい連中は銃やナイフを手にしながら走って迫ってくる。
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