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「元気だな。いくら貰えるんだ?」
「いくら貰っても、私らを狙ったら割が合わないってことを思い知らせてやる」
「地獄で思い知っても遅いんだがな」
大声でやり取りしながら、敵を撃つダイゴとラズ。
マサヤは運転に必死だった。銃撃を避けるようにジグザグに進み、時折迫ってくる倉庫を避け、逆に波止場の端から海ギリギリを横切る。
トラックが激しいエンジン音を響かせながら迫ってきては遠ざかる。
攻撃型ドローンからの銃撃も時折頭の上を掠めていった。
何で、何でこんなことに……?
泣きそうになりながら、人生で一番死に近づいていることを実感するマサヤ。
無口、無表情で銃を撃つオレグ。さすがに腕は確かなようで、ドローンを一機撃ち落としていた。迫り来るトラックにも臆さず攻撃している。
幸いなことに、この3人はかなり戦闘能力が高い。これなら、何とかなるかも?
そうやって自分を励ましているマサヤの視界が、バックミラーを捉える。
身を隠していたイーゴリが、動きの激しさに恐れをなしたのか起き上がった。そして、父であるオレグにしがみつこうとし、だが、彼が戦っているのに気づき躊躇する……その体勢が、非常に不安定だ。
やばい……。マサヤは急旋回していたハンドルを慌てて戻す。しかし、それがかえって小さなイーゴリの身体に余計な負荷を与えた。
「あっ!」っと小さく叫んだイーゴリがよろけ、左のドアにしがみつく。ロックを外してしまったのか、大きくドアが開いた。
イーゴリがしがみついたままのドアが、不安定に揺れる。
「イーゴリッ!」と叫びながら、オレグが手を伸ばす。
親子の手がつながれた。だが、揺れ動く車は彼らの身体を翻弄する。
そのまま2人揃って放り出されるのを避けるため、オレグは無理矢理イーゴリを引っ張り上げ、車内に投げ飛ばすようにした。
その拍子に、逆にオレグが落ちてしまう。
まずいと思ったマサヤがブレーキを踏もうとするが、ダイゴが怒鳴って咎める。
「停めるな。蜂の巣になるぞ。動きながら救出する」
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