SCENE 10 波止場

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 一瞬スピードが緩んだジープの側面に銃弾がめり込み火花が散る。  くそっ! アクセルを踏み直すマサヤ。  「папа(パパ)!」  それまで全く口を開かなかったイーゴリが叫んで手を伸ばす。それを抱え込むようにし、ダイゴが抱きしめる。  「ラズ、これをメッタ撃ちして連中を攪乱しろ」ダイゴが小銃をラズに渡す。「マサヤ、大きく右へUターンして、お父ちゃんにむかえ。俺が手を伸ばす。絶対止まるなよ」  「あいよっ!」と早速ラズが小銃を乱射する。その姿も様になっていた。  マサヤはただ言われるままUターンしてオレグの姿を探した。だが……。  「来るな。私1人なら何とかなる。イーゴリを連れて先に行ってくれ!」  そう言いながら、オレグが手を振った。行け、とジェスシャーで示している。  そのオレグに、攻撃型ドローンが迫った。銃弾が彼の左腕を掠め、よろける。だが、怯まず撃ち返していた。  ドローンからの銃撃を避けるように、走り出すオレグ。トラックのうち一台も彼に向かった。  「先に行けと言ってる。どうする?」  マサヤが声を張りあげながら訊く。   「そう言われて、そうですか、って応えるわけにはいかないんだよ、私らの仕事は。早く父ちゃんの方へ……あっ!」  ラズが話し途中で息を呑む。  オレグが、攻撃を避けながら走り、海へと飛び込んだのだ。  「マジかよ」さすがのラズも唖然としていた。  マサヤも驚いてスピードが落ちた。容赦ない銃撃が襲ってくる。  フロントガラスが割れ、派手な音をたてる。  「くそっ! 最初の予定通り路地へ突っ込め、マサヤ。今なら連中より先に行けるだろう。ドローンを置いてけぼりにして、まず馬鹿どもをかたづける」
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