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「オレグは?」
「ロシア陸軍の特殊部隊なら、切り抜けられる力はある。邪魔者に消えてもらってから探そう。急げ」
ダイゴに尻を叩かれるような感じで、マサヤはアクセルを大きく踏み込んだ。猛スピードで路地へと突き進む。
トラック2台と攻撃型ドローンが追撃してくるが、ダイゴやラズの迎撃が巧みで、距離を詰められないようだ。この2人、さすがに凄腕と言われるだけのことはある、と焦りながらも感心するマサヤ。
路地は狭く、車2台がすれ違うのも苦労しそうなくらいだった。両側を倉庫と古びたビルが建ち並び、ヘタにハンドルを切るとどちらかに激突する。できる限りのスピードを出しながらも細心の注意が必要で、マサヤの神経はズタズタになりそうだ。
しかも、そんなことなど素知らぬように「てめえ、どこかにぶつかって止まったら、連中に撃たれる前に私がケツに弾丸ぶち込むからな」とラズが怒声を浴びせてくる。
「下品なことは言うな、ラズ。上品に行こう」ダイゴが声を張りあげる。「マサヤ、次に突き当たったら、左へ曲がって5数えたら車を停めろ」
「え? 停まっていいの?」
「ああ、停まったら、素早く飛び降りて左のビルへ飛び込め。この坊ちゃんをしっかり連れて行けよ」
イーゴリを顎で示すダイゴ。ラズから返された小銃を抱え込み、シートに座る。
「おし。やっちまうか」とラズも得心がいったような顔で、銃をいったんホルスターに収めた。
ドローンは追ってこない。来るのはトラック2台だけだ。だが荷台には複数の荒くれ達。たぶん合わせると20人近くいる。2人で相手をするつもりだろうか?
疑問や不安を抱えながらも、マサヤは言われたとおりにするしかない。
突き当たったら、左、そして1、2、3、4、5で停まるっ!
リズムをとるように胸の中で唱えながら、ブレーキを踏み込むマサヤ。
ジープは急停車した。
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