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「ふん」ダイゴが小銃の先を空に向けた。「行けよ。これに懲りたら、更正しろとまでは言わねえ、もう俺達の前に現れるな」
「わかったよ」
男達が、おずおずと後退る。
ダイゴがマサヤ達に向き直る。ラズもつまらなそうに近づいてきた。
「さあ、お父ちゃんを探しに行こう」
言いながら、ジープに戻るダイゴ。
マサヤがイーゴリの手を引き続く。彼の表情は相変わらず動かない。言葉を知らないかのように口を噤んだままだ。
チラッと視線を向けると、さっきの男達が立ち止まっていた。そして、その手には銃が……。
「ま、まずいっ!」
マサヤが叫ぶと同時に、銃声が響く。3発だ。
だが、倒れたのは男達だった。
見ると、ラズがいつの間にか銃を手にし、発砲していた。
「こんなことだろうと思ったよ」
ホルスターに銃を納めながら呟くラズ。
「どうした、マサヤ? 早く乗れ。連中を供養してやる義理はないぞ」
ダイゴもラズも、最初からわかっていたのだ、あの3人が黙って消えていくわけはない、と……。
「ああいう連中がたくさんいるご機嫌な場所さ、ここは。しばらく楽しみなよ」ラズがマサヤの肩をポンとたたく。そして視線をイーゴリに移した。「肝が据わっているのか、それとも感情がないのか、得体の知れないガキだな……」
目の前で多くの殺戮があったが、イーゴリは表情を変えない。
先行きに大きな不安を抱えながら、マサヤは再度ジープに乗り込んだ。
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