SCENE 12 占術師の館

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 「あんた、占い師なんだって?」  「預言者だよ。ついでに占いもやる。気が向いたら呪術も使うが、何がお望みだい?」  「ロシアから流れてきたのか? 使うのはロシアの占術か?」  「ロシアの北、寂れた集落にいたよ。そこで大火球の熱と衝撃に巻き込まれて、力を得た」  「ツングースカ大爆発のことか? よしてくれ。それは百何十年も前の話だ。いくら何でも、あんたが生まれているはずはない」  「父の話さ。私はそれを引き継いだ」  「そうか。それは、素晴らしい遺伝だ」  柳の足下を、一匹の猫が横切っていった。珍しい赤毛の猫だ。奥の部屋へと消えていく。柳は視線でそれを追った。  「そっちの部屋は部外者立ち入り禁止だよ」マリートヴァが視線さえも許さないというような口調で言った。「あんたがどれほどの力を持っているか知らないが、あっちに足を踏み入れたら、たたじゃすまないよ」  「心得ておくよ。妙な猫が入っていったが、それは平気なのか?」  「あんたよりはましな生き物だからね」  「なるほど」と肩を竦める柳。  「で、何が望みなのか、さっさと言いな」  「教えてくれ。この街に災厄が来ると言ったそうだが?」  「残念ながら、それはもうはじまったらしいね」  「どんな災厄だ?」  「詳しいことはわからないよ。ただ、たくさんの血が流れる。まあ、ほとんどは薄汚れた血だけどね」  「祖国、つまりロシアから来ると言ったそうだが?」  「ああ、そのようだ。私のルーツと繋がっているような気がする」  「ルーツ? ツングースカ大爆発?」  「同じ波動を感じる。もうすぐ、とんでもないものが姿を現すよ」  ふむ、と首を傾げる柳。この老婆は、恐らく何らかの力を持っているようだ。だがそれは、柳が利用できるものではないらしい。
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