SCENE 12 占術師の館

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 「防ぐ手立ては、ないのか?」  「はじまってしまったから、もう無理だ。防ぎたかったのかい?」  「いや」柳は肩を竦める。「中途半端はイヤなんでね。どうせ騒動が起きるなら、この街全部を壊してしまうくらいのがよかった」  「この街はまだなくならないよ。よく考えてみなよ。この街は、この国の、いや、この世界の縮図みたいなものさ。どこも、きれいに着飾り真面目づらしているが、突き詰めていけばこの街と同じさ。そういう意味では、人類が滅亡でもしない限り、こういう街はなくならない」  「それもあんたの預言か?」  「いや、そんなに軽々しく預言なんてしないよ。これは、私の感想さ」  「それなら、外れるかも知れないんだな?」  「そりゃあ、そうさ。言っておくけど、神の預言だって、外れることはあるからね。森羅万象、確実なものなど何もないのさ」  「ふふ……。信じるものは、己のみ、か……」  「それもまた、不遜な話だが、真理でもある」  マリートヴァのその言葉を聞きながら、柳は踵を返した。利用できる相手でないとわかったら、もう用はない。  「邪魔したな」と言いながら札を三枚テーブルに置き、ドアへ向かう。  「待ちなよ。外には、あんたにとっての災厄が待ってるよ」  「ん?」足を止める。だが、一瞬だった。「それは、楽しみだ」  柳は館を後にした。  ※    ※    ※    柳が出て行った後、マリートヴァはふと苦笑を漏らした。  まあ、あれはそう簡単に死ぬようなタマじゃないけどね。  それにしても妙だね。この私が、ずいぶんとお喋りになっちまった。  変わった男だよ……。
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