150人が本棚に入れています
本棚に追加
「いい趣味してるな、おまえ。惜しいよ」
「何が惜しい?」
「殺してしまうのがさ」
一瞬で空気が凍った。男が素早く銃を抜き、それを柳に……。
向けられなかった。銃口はまだ路面を向いたままだ。そこで、男の右肩に超小型ナイフが突き刺さっていた。
柳の左手は男に向けられている。一瞬早く、ナイフを放ったのだ。
左手の袖を確かめる。そこには常にナイフを忍ばせていた。こういう時のためにだ。そのまま柳は男に向かって歩く。
「遅いな。それじゃあ、いちごちゃんに勝つなんて百年早い」
そう言いながら、柳は男の目の前に立つ。そして、銃を奪うと男の額に向けた。
「や……。ま、待て。待ってくれ」
「心配するな。苦しめない」
言い終わると同時に銃爪を引く。男の頭に風穴が開いた。
そして即座に、路地の右、左と銃弾を放つ。
短い悲鳴があがり、それぞれの場所で何者かが倒れた。
柳はつまらなそうに銃を捨てると、また歩き出す。
しばらく行き、商店街から一本奥、海側のストリートに出た。スーッと音もなく黒塗りの車が近づいてくる。
柳の前で停まった車から、屈強そうな男が2人降りてきた。
「ボス、困ります。一人でこんな所を出歩かれちゃあ」
「俺は良家のお嬢さんじゃないぞ」苦笑する柳。「それより、あっちに死体が3つある。俺がやった。回収して、雇った奴を調べさせろ。それから、首から上だけ斬りとってしばらく晒せ。カラスのいい餌になるだろう」
顎で指示を出す。
「わかりました」と頭を下げる男達。
柳が乗り込むと、車はまた音もなく走り出し、夜の闇にとけ込んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!