残された殺意

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「何がおかしいっていうんですかぁ?」  もはや箸が転げてもいちゃもんつけるぞ状態になっている登紀子は、すかさずそこに噛み付いてくる。後悔しても後の祭りだった。 「私が苦境に立たされているのがおかしいっていうんですかぁ?」 「ち、違うわよ。そんなわけないじゃない」 「じゃあ、この展開で何を笑うっていうんですかぁ?」 「えーと……」  どう説明すれば分かり易いだろう。  そんな事を考えてしまい、つい口が止まった。 「やっぱり私の苦境を笑ったんだ……」 「違うってば……」  登紀子の目が座りつつあることに気付き、梓は帰りたい気分で一杯だった。 「みんなが私を苦しめる……」 「みんな?」 「そうですよぉ。課長も、ババアも、部長も、あの探偵も……。そして、今や先輩まで私の敵……」 「敵じゃないってば……」 「周り敵ばっかりで、どうやって決算乗り切れっていうんですかぁ……」 「だから、私は敵じゃないわよ? 聞いてる?」  何度目かの敵じゃない主張に対し、すっかり目の座った登紀子は唇をとんがらせていった。 「じゃあ、経理に戻ってきてくださいよぉ」 「ん?」  突然飛び出して来た発言に、思わず梓は真顔で首を傾げた。
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